Yuki Onodera

オノデラ ユキ

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  • StareReapとのコラボレーションを通して

    今回のコラボレーションで実現化した作品「ここに、バルーンはない」は私が長年制作している銀塩写真と、デジタルの新しい技術である StareReapプリント、この2つを「衝突」させる事で生まれてくる「止揚」の効果を期待した実験作品とも言えます。
    ベースになる銀塩写真は、歴史に関わる場所そのものを現場で撮影し、自身の手で2m大のサイズにプリントしたものです。粗めのキャンバスにこのバライタ・プリントをコラージュしました。そこまではいつもの私の作品作りの方法です。
    この作品で重要なのは、その銀塩プリントの風景写真の上に直接施されたStareReapプリントです。その黄色部分は幾多のイメージよって組み上げられています。溶かした物体を撮影し、そのイメージに雑多なイメージを次々と重ねて行きました。
    黄色い部分は一見、ペインティングのようにも見えますが、それらはあくまでも撮影されたイメージで成り立っています。あえてデジタル・プロセスで作られていると分かるように強調した部分もあります。

    私にとってのポイントは作品をパッと見たときに、これは皆が知っている技術、インクジェットプリントでもなければ、シルクスクリーンプリントでもないし、絵画でもない、、、というように、一目では分からないものにすることでした。

    心配は銀塩プリントの表面上に私の想像通りにStareReapがプリントできるかどうかという点でした。

    黄色い部分は実際の撮影、そしてコンピューター上での合成で出来上がっていますが、私がディスプレイ上で見ている画像と現実にレリーフ状になったStareReapとはもちろん距離があります。その距離を縮め、さらに魅力的に現物化するためにどのような調理をするのか、この調理こそがこのプリントを現物として存在させる要と思います。
    そして今回この調理を担当してくださった技術者は作家側の制作では不可視なところに細やかなスパイスを効かせ、微妙な塩梅で仕上げてくださいました。


    写真自体を主題として、またマテリアルとしながらもいかに手の痕を残し、手作業による制作をするかという仕事を続けてきましたが、StareReapは私の見方ではその方向性の真逆にある技術でした。でも真逆はかえって面白い。
    StareReapは立体的で物質感のある表現が特徴です。でもそれは画家が絵の具を重ねていくような身体性を帯びた表現とは違いますね。ある意味では量産可能なインダストリアルな技術。逆にこれがこの技術の面白さのひとつと思えます。だからアートだけでなくクラフトとアートの境界線にあるような新しいジャンルを生み出す可能性を秘めた技術とも言えるでしょう。そう、21世紀のアーツ・アンド・クラフツ運動につながったら面白いですね。